2011年10月6日木曜日

オーサグラフ ~21世紀の世界地図~          建築家、オーサグラフ開発者 鳴川肇氏

SEEDS TIMESでは、10月22日(土)のTEDxSeeds2011会議に向けて、登壇者の方々への
事前インタビューの模様をお届けしていきます。

 第一弾は、建築家でオーサグラフ開発者の鳴川肇さんです。
オーサグラフは、authalic(面積が等しい)とgraph(図)に由来し、立体をできるだけゆがみを少なくして平面に表す方法のこと。この手法を使って作られたオーサグラフ世界地図は、陸地の面積比を極力正しくかつ形状のゆがみも抑えながら、長方形の平面に収めることに成功した画期的な地図です。
様々な模型やデザイン画が並ぶアトリエにお邪魔し、この新しい世界地図を作るに至った経緯についてお話を伺いました。




 「オーサグラフは地球儀と地図との間を行き来できるようなもの。いろんな見方があっていい、そう考えたらすごく面白いことになるんじゃないか」


■今までにない空間表記法を求めて 

―子供の頃からものを作ったりするのが好きだったんですか?

はい。勉強は好きではなかったのですが、イタズラや工作は好きでした。僕の場合、子供の頃の遊びも、建築も、幾何学も、全て一繋がりにあるんです。
もともと空想好きな子供でしたから、その延長で、大学では建築史を学び、物語性のある建物のビジョンをたくさん提案しました。でも、やればやる程に、構造的にきちんと成立しなければ面白くないと考えるようになり、構造の世界に入りました。




―構造からどのように世界地図へと繋がったのでしょうか?

始めから世界地図を作ろうと思っていたわけではないんです。オーサグラフ世界地図は建築のデザインに使う透視図法のゆがみを直す研究の延長線上にあります。透視図法のゆがみについては、発明したダ・ヴィンチ本人を含め500年以上も前から言及されているのに、今も変わらず使われていて、僕は「それってちょっと変だな」と思ったんです。建築家はどうやったら空間をゆがみなく平面に表現できるか、その方法についてもっと考えなくてはいけないんじゃないかと。だから僕は、オランダの大学院で全方位をゆがみなく平面に表せる透視図法を提案し、最終的には、真上と真下も含めた360度以上の世界を写せる、全方位カメラを作りました。



■世界中、どこが中心でもいい

―そのカメラの技術がオーサグラフ世界地図に応用されているんですね。

はい。オーサグラフ世界地図は、どこを中心にしても長方形に収まるゆがみの少ない地図です。つまり、ブラジルや南アフリカ、南極…世界中、どこが中心でもいいんです。また、地理情報や様々なデータもさることながら、国境や気象の変化など、時間軸を入れて見ることも出来るのです。


 ―可能性が広がりますね。

僕は、地球を見る時に、地球儀を見るか、地図を見るかって、二者択一の考えかたには反抗するクセがあるんですね。例えば、建物の一階と二階の移動手段は?と言われて先ず思いつくのは階段、エレベーター、エスカレーターといったところでしょう。でも、ほんとにそれだけ?って思いませんか?すべり台でもいい。そしたら建物のデザインはガラリと変わります。つまり、地球を見る手段を変えると、新しい発見があると思うんです。


 ―TEDxSeeds会議2011では、どんなことを伝えたいですか?

当日、もちろん言葉でも説明しますが、アニメーションや絵を見たり、模型を触ったりして、実際に体験してもらいたいですね。楽しい図工ワールドです。オーサグラフの世界地図は、人によって違う物語がいっぱい展開できること、それが何て言ったって楽しい。その楽しさを伝えられたらいいなと思います。


―本日はありがとうございました。


(2011年9月29日、鳴川氏アトリエにて)



 <編集後記> 
何より感銘を受けたのは、鳴川さんの作品全てに共通するデザインの美しさ。そして、オーサグラフ世界地図は、世界の多極化、緊密なネットワーク、生態系を重視する21世紀の時代に合ったものだと感じました。この地図を自由に操り思い思いの視点を備えた子供たちは、これまでの世代の人たちとは異なる世界観で一つの地球を眺め、今よりずっと「宇宙船地球号」を上手に操縦するのではないか、そんな想像を膨らませました。鳴川さんの図工ワールド、是非TEDxSeeds2011で体験してみてくださいね。(文責:松井華織/TEDxSeeds Community Design Team)

【TEDxSeeds2011カンファレンスプログラム・登壇者紹介ページ】
http://tedxseeds.org/conferences/2011/speakers



鳴川 肇(Hajime NARUKAWA)  http://www.authagraph.com/
建築家、オーサグラフ開発者。
1971年生まれ。芝浦工業大学卒。東京藝術大学修士課程修了。1994年から幾何学理論の研究を始める。
VMX Architects、佐々木睦朗構造計画研究所を経て、2009年 AuthaGraph株式会社設立。同年、ICC「オープン・スペース 2009」テーマ展示「ミッションG :地球を知覚せよ」において、「オーサグラフ」による世界地図を初公開。
現在は、主に模型による立体幾何学的検証を軸にアイデアを展開し、社会のニーズにどう応用できるかを探求している。美術、デザイン、エンジニアリングの分野にわたり活動中。本年6月、日本科学未来館による常設展示、「ジオ・コスモス、ジオ・パレット、ジオ・スコープ」において、基本設計、実施監修を担当。1994年、「ゴールデン街の小劇場」でJIA卒業設計競技金賞、1996年にはサロン・ド・プランタン賞を受賞、他受賞多数。
日本国際地図学会会員。桑沢デザイン研究所、東京造形大学非常勤講師。日本科学未来館アドバイザー。


【日本科学未来館「つながり」プロジェクト】
現在、日本科学未来館「つながり」プロジェクトのGeo-Scope(ジオ・スコープ)、Geo-Palette(ジオ・
パレット)では、「オーサグラフ」を使った“中心のない地球”という、新しい地球 の捉え方を提示しています。
特設サイト:http://www.miraikan.jst.go.jp/sp/tsunagari/

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